地球の底でブルー愛を叫ぶブログ
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「赤の宝玉」(4)
遠くの声が徐々に近づいた。
「・・・・れを・・・」
「誰を・・・・・・だ・・・・・」
「―誰を愛してる!」
耳元で怒鳴り声がした。
ブルーは我に返った。
目の前に青い瞳と黒髪の男がいた。
「・・・キー・・・・ス・・・
愛してるのは…キース・・・・・」
反射的に答えた。
「嘘をつけ。誰を愛してるといった」
「・・・・・キース・・王太子・・・?」
「もういい」
舌打ちをして、キースはブルーから離れた。
脱ぎ捨てた夜着を羽織る。
「おまえは誰と比べてる。最初の夜もそうだった。」
意味がわからず、ブルーは戸惑いながら答える。
「だれも・・・・」
「嘘をつくな」
キースは静かに言った。
「寝言で別の男の名を呼んだ。」
キースはブルーを刺し殺す様な視線で見た。
「ジョミーとはなんだ。そいつはどこの誰だ。」
ブルーの表情が変わった。のろのろと起き上がる。
横を向き、考え込んでいるようだった。髪をかき上げる。
「・・・・・わかったら・・・どうする?」
「殺しに行く」
「物騒だな・・・・・」
ブルーは笑った。
「僕の記憶はズタズタになっていて・・・・・誰が恋人か家族かわからなくなっている。
無意識にいう名前が『恋人』だという保証がどこにある。」
「生意気をいうな!男娼のくせに!」
びくりと震え、ブルーの顔から笑みが消えた。
「いい気になるな。ちょっとかわいがるとつけ上がるのは『女』と一緒だ。
その気になればおまえの首などすぐはねられる。
今まで生き延びていられて幸運だと思え。」
立ちあがり、大股で歩き出す。
キースは部屋の出口で振り返った。
「しばらく来ない。よく頭を冷やせ」
その言葉は自分自身に言い聞かせるように聞こえた。
キースはカーテンを乱暴にしめ、後宮を後にした。
回廊でキースはこぶしを握り締めた。
(なぜこんなに心が騒ぐ。あの者は「呆け」ではないのか。
ただの慰みものでしかないのに・・・・・・なぜこんなに胸が痛いのだ。)
キースは自分の心に気付かないでいた。
ブルーはキースに結わえられた革ひもをゆっくりとはずした。
腕の方も痣がついている。
キースは何を「縛りつけて」おきたいのだろう。
今更逃げたりはしないのに。
自分は記憶もあいまいで、彼の慰みものになることでようやく命をつないでいる。
身体も弱く、すぐ熱をだす。
美しいとほめてはもらっても、あまり嬉しくもない。
「男」としても「女」としても役立たずだ。
キースの方がよっぽど何もかも「持って」いる。
城も富も部下も健康なたくましい身体も。
なのに、あのキースという男は王子という身分なのになぜあんなにいらつき、淋しさを漂わせるのだろう。
自分にかまうのも気まぐれというより何か逃げるような気もした。
「ああ、ジョミー・・・・・
とても大事な約束をかわしたような気がする・・・・・・」
ブルーは頭を抱えた。
「だめだ・・・・・
思いだせない・・・・・・・」
ブルーはここに来てから初めて情事の痛み以外で泣いた。
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